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特発性正常圧水頭症とパーキンソン病では歩行中の全身の動きの「ゆらぎ」のパターンが変化



スマートフォンで出来るモーションキャプチャーシステムTDPT-GTを利用した歩行解析研究
sensors(2023年11月18日)

研究成果の概要

  • iPhoneアプリTDPT-GTによって、全身27点のモーションキャプチャが、診察室で数分で行えるようになりました。
  • 特発性正常圧水頭症とパーキンソン病の患者さんの歩行では、体幹や手足など全身の動きで、「ゆらぎ」変動のパターンが、病気のない人に比べて変化していました。この変動パターンから、歩行の不安定さや転びやすさの指標を計測できる可能性があります。

背景

例えば呼吸のように吸う?吐くを繰り返すような動き、心拍のように一定のリズムを刻む動きなど、生物には繰り返しの動きや形を続ける仕組みがあります。健康な場合は、機械的にまったく同じリズム?周期ではなく、このリズムが少しずつ変動すること(今回「ゆらぎ」と呼びます)が知られています。歩行もまた、手足の動きを繰り返していますが、その際に「ゆらぎ」があることがわかっていて、これまで、パーキンソン病などの患者さんでは歩幅のゆらぎなどが正常から変化していることが報告されていました。

人などの3次元の動きをデジタルデータにできるモーションキャプチャは、これまで、複数台のカメラを広い場所に設置する特別な装置と実験室が必要でした。そこで、スマートフォンカメラの画像に対してAIにより体の部位の位置を推定することにより、同じようなモーションキャプチャできるiPhoneアプリが開発されました(TDPT-GT)。これを用いると、病院の診察室のスペースでも、数分の歩行の撮影をして患者さんの全身のモーションキャプチャが可能になりました。

今回の研究では、特発性正常圧水頭症とパーキンソン病の患者さんの歩行をTDPT-GTによって捉え、歩行のゆらぎ解析を行いました。

スマートフォンの画面キャプチャ

左図はスマートフォンのアプリTDPT-GTで表示されている計測画面です。
半径1メートル程度の円(赤い点線)が描ける広さがあれば、計測をすることができます。
写真では、見本のためそれより広いスペースで撮影しました。
頭、肩、腕、手先、股関節、膝、足など、全身27箇所の3次元座標をスマートフォン内に記録します。そのデータを用いて今回の研究を行いました。
患者さんの記録は一人で安全に歩ける方に行い、目が回らないようにゆっくりとしたペースで2周程度回ってもらいました。

研究の成果と意義、今後の展開

特発性正常圧水頭症 23名、パーキンソン病23名の患者さん、神経変性疾患のないボランティア92名に、直径1mの円軌跡を描いて歩いてもらう様子を、スマートフォンカメラでビデオを撮るのと同じ要領でTDPT-GTで記録しました。このアプリでは全身27点の3次元相対座標モーションキャプチャデータが1秒間に30コマ得られるので、体の各部位のそれぞれ128 コマ分のデータに対してゆらぎ解析を行い、ゆらぎ指数を出しました。ゆらぎ指数は、ボランティアと患者さんでは体のすべての部位で差がありました。特発性正常圧水頭症の患者さんのほうが、パーキンソン病の患者さんよりもゆらぎ指数が正常から離れていた傾向がありました。ゆらぎが正常のパターンから外れていたのは、足腰だけではなく、体幹や手の動きでも認められました。

特発性正常圧水頭症やパーキンソン病の患者さんでは、「歩行障害」があることが知られています。歩行が遅くなる、歩幅が狭くなる、足をひきずるように歩く、ふらつく、転びやすくなる、といったことが起きます。ゆらぎが正常でないということは、歩行中にどういった意味を持つかは、完全に解明するのは難しいですが、例えば歩行中に少し不安定に感じたり、少しの契機で転びやすくなったりするのかもしれません。また、歩行といえば足腰の動きに注目しがちですが、患者さんでは、体幹や手の動きも歩行時にゆらぎパターンが正常ではなかったので、全身の動きのリズムを保つ仕組みが障害を受けているのかもしれません。今回の研究で使ったようなゆらぎは、今後、アプリに搭載されるなどすると、歩行の異常の新しい指標として利用できるのかもしれません。病気の治療やリハビリテーションの前後でこれを指標とすることもできるかもしれません。

また、今回のように診察室でモーションキャプチャが出来ることで、歩行の診察の中で医師が目で見て判断するだけでなく、このような定量的な測定ができるようになります。また、診察室だけではなく、介護現場や住民参加の健康教室などで歩行を手軽に測ることも期待できます。

研究グループについて

研究グループには、スマートフォンアプリTDPT-GT(現時点では研究用、非公開)制作者の青柳幸彦、アプリ実用化の365体育投注の山田茂樹、ほか多分野の歩行障害を診療する臨床医や療法士らが参画しています。今回、山形大学では、脳神経内科で取得した患者さんの歩行のデータを、山形大学大学院理工学研究科の深見忠典らが解析に参画しました。医工連携の研究として今後も発展が望まれます。

論文タイトル

Fluctuations in upper and lower body movement during walking in normal pressure hydrocephalus and Parkinson’s disease assessed by motion capture with a smartphone application, TDPT-GT
(スマートフォンアプリケーションTDPT-GTで捉えた、特発性正常圧水頭症とパーキンソン病における歩行中の上半身と下半身の運動のゆらぎ)

著者

伊関千書1, 2、鈴木渉3、深見忠典3、山田茂樹4, 5, 6、早坂達哉7、近藤敏行2、星正行8、小林吉之9、上田茂雄10、石川正恒 6, 11、菅野重範1、鈴木匡子1、青柳幸彦12、太田康之2

所属
1;東北大学大学院 高次機能障害学
2;山形大学365体育投注第三内科?脳神経内科
3;山形大学大学院 理工学研究科 情報?エレクトロニクス専攻
4;365体育投注 脳神経外科学講座
5;洛和会音羽病院 正常圧水頭症センター
6;東京大学 生産技術研究所
7;山形大学365体育投注麻酔科
8;福島県立医科大学保健医療学部 理学療法科
9;産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 運動機能拡張研究チーム
10;信愛会脊椎脊髄センター
11; 洛和ヴィライリオス
12; 株式会社デジタル?スタンダード

掲載学術誌

学術誌名:Sensors
doi: 10.3390/s23229263.